この家の屋根は「土葺き工法」にて瓦屋さんに葺いていただきます。
土葺き工法とは・・・野地板の上に杉皮や檜皮などを敷き(今回はコロシート)、水分を含んだ土を載せ、その粘性・接着力で瓦を葺いていく工法の事。基本的に平瓦は置いてあるだけ、軒瓦.袖瓦.棟瓦などの役物は、銅線で縛るなど緩やかに固定がしてある程度である。
瓦と土の重量はおおよそ1:1となり、この家の場合、屋根面積約220㎡に対し瓦+土で約20t=90㎏/㎡となります。昔の民家は開口部が多く壁が少ない・軸組で持たせる「柔構造」が特徴的です。その為、地震発生時など外力が加わった時に、重量物である瓦が動く事によって頭(屋根)が振られる力を分散させていたと考えます。現在主流の建築では、コンクリ基礎に脚(土台)を固定し、壁(面材)で持たせる「剛構造」の為、頭は出来るだけ軽くするというのが基本ですので、土葺きは向きません。その前に、新築では瓦ガイドライン工法によりビス止め・補強等の決まりがあるので、紬建築でも桟葺き工法で施工しています。今回は、民家の造り・施主さんのご理解・改修工事である事を念頭に置いた上で行っています。






土葺き工法の外力分散などはネットで検索してもよく見かけますが、私がもう一つ重要視するのはその「重量」です。先ほども記述しましたが、瓦と土だけで約20tの力が家全体の主要な柱.土台に掛かります。ということは、相応の反力が掛かり、荷重に対して反力が拮抗し合っている為、柱脚.土台は微力な振動が発生していると考えます。その微振動が木材中・そのまわりの空気中の水を動かし、腐朽の予防に一役買っている。とある方から教えていただいた時にハッとしました。空き家になると風通しが悪くなり、すぐ家が傷むといいますが、生活の中で起きる「振動」が無くなる事も大きな原因だと気づかされました。家は大切に住まわれる事で、より永く存在意義を保つことができますね。それこそが本当の「サスティナブル」だと思います。